甲谷 太郎
留学先:Mayo Clinic, Department of Cardiovascular Medicine (USA)
北海道大学循環病態内科学教室の医局員、同門会の先生には平素より大変お世話になっております。私は現在、米国メイヨークリニック心臓血管部門で不整脈の基礎研究に従事しております。メイヨークリニックはミネソタ州のロチェスターという小さな町にあり(アメリカではロチェスターというとみんなニューヨークの方のロチェスターを思い浮かべるようです)、まさに病院を中心とした町づくりで、町の3-4割の人がメイヨークリニックの職員と言われております。ロチェスターは札幌と同じ緯度の割には雪が少ないものの、冬は-25度になることもありアメリカの冷凍庫と言われております。2023年1月から留学を開始し、早いものでもう1年が経過いたしました。異国の地での生活の立ち上げは想像以上に大変でしたが、メイヨー日本人会の皆様に多くのご支援をいただきなんとか研究生活をスタートしております。
私は現在2つのラボで研究に従事しております。Dr. Siontisラボでは、難治性不整脈に対する陽子線治療に関する研究に携わっております。不整脈に対する放射線治療は近年注目されはじめた分野で、体外から放射線照射を行うことで短時間で非侵襲的に不整脈を治療するというコンセプトになります。我々はその中でも、ブラッグピーク特性という性質から周辺臓器への被爆を最小限に抑えた治療が可能になる陽子線について注目して研究を行っています。もう一つのDr. Asirvathamラボではパルスフィールドアブレーションを中心とした新規治療デバイスの開発についてブタを用いた動物実験を行っております。実験の日は、朝早くから出勤しブタの剃毛から始まり、鼠経穿刺、マッピング、アブレーションを行い、安楽死させた後に心臓を摘出し組織所見を確認するといった日々で大変ながらも非常に充実しております。ラボには日本人フェローも2人在籍しており切磋琢磨しながら研究生活を送っております。メイヨークリニックには多くの指導医が在籍しており、ありがたいことにそれぞれの専門分野についての研究テーマに複数携わらせていただいています。自分の研究テーマの実験はまだ始まったばかりで結果はまだ出ておりませんが、どのようなことが現在の不整脈診療において課題で、今後必要になるかという着眼点や思考過程、課題解決方法など、非常に多くのことを日々学ばせていただいております。
生活面では渡米直後から色々と大変なことも多かったですが、なんとか家族4人で乗り越えてきたことで家族の絆は日本にいた時以上に強くなっていると実感します。また奇跡的に北大同期の多田篤司先生も同時期にメイヨークリニックに留学しており家族ぐるみのお付き合いをさせていただいております。気心知れた同期が異国の地にいるということは非常に大きな心の支えであり幸運だったと思います。
最後になりますが、この留学の機会を与えていただいた安斉俊久教授、永井利幸准教授、表和徳助教をはじめ北海道大学循環病態内科学教室の医局員、同門会の先生方にこの場をお借りして深く感謝を申し上げます。そして2年前に留学について相談したところ快く送り出してくれた当時の不整脈班班長の渡邉昌也先生、現リーダーの天満太郎先生、鎌田塁先生、そして現在の不整脈班の皆様に感謝申し上げます。米国での研究生活は、言語の壁や文化の壁もあり大変なことも多いですが、非常に良い人生経験になっていると思います。こちらで学んだことを一つでも多く日本に持ち帰り、研究を継続・発展させ、北海道の循環器診療に微力ながらも貢献できればと思っております。今後ともご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。