サルコイドーシスは原因不明の全身性炎症性疾患であり、肺・心臓・皮膚・眼など様々な臓器に肉芽腫性炎症を引き起こすことにより臓器障害を引き起こします。特に心臓病変(心臓サルコイドーシス)の合併は重大な予後規定因子となるため、心臓病変の早期発見・早期治療が求められています。また、診断・治療技術の著しい進歩から、非虚血性心筋症である心臓サルコイドーシス、心アミロイドーシス、心Fabry病なども診断率が向上し、一部の患者様に有効な新規治療も可能になってまいりました。
当専門外来では様々な最新診療技術(病理、画像診断含む)を駆使し、心臓サルコイドーシス(疑いを含む)・心アミロイドーシス・心Fabry病などでお困りの患者様に最適な診療を提供できるよう努めてまいります。
なお、当専門外来は日本循環器学会からトランスサイレチン型心アミロイドーシスに対する疾患修飾薬(ビンダケル®・ビンマック®・ビヨントラ®)導入認定を受けており、道内では数少ない処方認定施設の一つです。
2025年6月より、当専門外来では、トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者様を対象に、疾患修飾薬の遠隔処方を開始いたしました。トランスサイレチン型心アミロイドーシスは、高齢者に多い希少疾患であり、生命予後の改善効果が証明されている疾患修飾薬の初回処方には認定施設での処方が規定で定められております。北海道内ではこれまで、処方認定施設が北海道大学病院、札幌医科大学病院、旭川医科大学病院の3施設に限られており、遠隔地(北見、釧路、帯広、函館など)の患者様は長距離移動を余儀なくされる状況にありました。そのため、通院の負担が大きく、効果の証明された治療が必要な患者様に十分行き届かない現状も指摘されてきました。
その現状を打開するべく、北海道大学病院循環器内科では、遠隔医療支援システム「医用画像共有プログラム:Caseline®」と、オンライン診療サービス「Cron®」を活用し、以下の2段階で遠隔診療を行うモデルを構築しました。
第一段階 遠隔連携診療:北海道大学病院の疾患修飾薬処方認定医師と紹介元病院の循環器内科医師が「Caseline®」を用いて電子カルテを接続し、患者様同席のもと、トランスサイレチン型心アミロイドーシスの確定診断と疾患修飾薬の処方適応を判定します(遠隔連携診療料算定対象)。
第二段階 初回処方の遠隔実施:適応判定後は「Cron®」を活用し、北海道大学病院の疾患修飾薬処方認定医師が直接患者様と遠隔で面談し、疾患修飾薬の初回処方を行います。以降の処方は、日本循環器学会の規定に基づき、紹介元病院で継続的に行われます。
本モデルは日本循環器学会から、北海道大学病院への通院が困難な、北海道内の遠隔地に対する処方に限り承認され、本モデルによる遠隔処方が可能となりました。当科では、今後も地域医療の充実と患者様の負担軽減を目指し、心不全遠隔診療の活用を進めてまいります。