当院では、2010年から、ご高齢者の硬化性大動脈弁狭窄症に対して、順行性アプローチよる経皮的カテーテル的バルーン大動脈形成術(BAV)の取り組みを積極的に施行してまいりました。BAVは、一時的な患者さんの日常生活動作の改善はできるものの、再狭窄率が高いため、その有用性に限界があります。世界においては、BAV以上のさらなる有用性かつ安全性を追究した非侵襲的な治療として、人工弁を使用したTAVIが、フランスのルーアン大学のAlain Cribier教授により2002年に考案されました。以来、ヨーロッパ・北米を中心に、現在、世界で10万人以上の患者さんに行われています。
本邦でも2013年10月より、TAVIが保険償還となり非常に良好な成績(術後30日死亡率約2.0%)を収められております。その背景には、TAVIを安全かつ有効に普及させることを目的とした、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会の4学会より構成されたTAVR関連学会協議会により、ハートチーム体制の整った実施施設基準を満たした医療機関でのみ、厳格にTAVIを行うことを義務付けられている点が、本邦における良好な成績・安全性を確保できている理由の一つであります。
当院も、2016年3月からTAVIを開始し、これまで約200例の患者様を治療させて頂きました。デバイス留置成功率は100%で、開胸手術への移行1件、術後30日死亡は0件と非常に成績は良好です。